犬の肥満

 

最近増えた「デブ」な動物たち。

 

今日は犬の肥満のお話です。

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肥満は、体に脂肪が過剰についた状態です。

それによって様々な身体機能に変化が出て、病的な状態を引き起こします。

WHOでは人の肥満を「健康に有害な結果をもたらす過剰な脂肪」と定義しています。
そう、適度な体脂肪は体にいいのです。 

 

人では身長、体重、性別などから理想的な体重の範囲を示すこともできますが、

犬では個体による大きさと体型の差があり過ぎて、人のような計算式には当てはまりません。

 

ご自分の犬の理想体重を知っておくことは大切で、
それには 

肥満になる前の成犬の時の体重を知っておくことです。

最近は、成長期にすでに太り過ぎの犬もおりますが・・。

 

犬では主にBCS(ボディコンディションスコア)という指標を使って判定することが一般的となっています。

簡単に言うと、脇腹を触って肋骨がどのくらい触れるか、です。

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犬の肥満の割合については各国で調査されています。

 

調査頭数

推定割合

文献

イギリス

8268

24%

Edney,1986

アメリカ

30,517

28%

Lund, et al,1999

ブラジル

648

17%

Jerico,2002

オーストラリア

860

25%

Robertson,2003

 

国によっても違いますが、だいたい25%前後の肥満率が多いようです。

人間の方はもっと違うようです。
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 日本人は、たったの3%・・・。・・・。


 

犬種による違い

各国の論文では、肥満には各々の国で傾向があるようです。

イギリスでは、ラブラドール、コリー、ケアンテリア、キャバリアビーグル、コッカスパニエルなど。

スウェーデンでは、ロットワイラー、セントバーナード、ニューファンドランド、チャウチャウ、スコッチテリアなど。

これらの統計は、各国で飼育されている人気犬種や血糖などの違いから、他の国にはそのまま当てはめることはできません。

 

それでも一般的に、肥満になりやすい犬種はあります。

小型犬では、ミニダックス、キャバリア

中型犬では、ビーグル、コッカスパニエル

大型犬では、ラブラドール、ゴールデン、バーニーズ

などです。

 

逆に肥満が少ない犬種も存在します。

ヨークシャテリア、グレイハウンド、ジャーマンシェパード、ドーベルマンなどです。

 

食べても太らない犬もいるし、少食でも太る犬もいる。

明らかに個体差や遺伝的素因も関係しているのは明らかですが、

まだまだ詳細には解明されていません。

 

どこの獣医さんでもいうことですが、

太った飼い主さんが飼う犬は太る

ということです。

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これは生活習慣や食や肥満に対する認識のためでしょう。
太っていてもいいや、という認識は減量の妨げになります。

 

肥満は、人と同様に、歳と共に増加します。

肥満の年齢別割合では、

成長期の子犬では9%

4歳以下の犬では20%

そしてほとんどが5歳から8歳の間に肥満になっていきます。

 

成長期の若いころに肥満だった子犬は、成長期に痩せていた犬よりも肥満になる率が1.5高くなります。

 

避妊去勢手術後の肥満率は32%で、不妊していない犬の15%と比較すると、約2倍の確率で肥満になりやすくなります。

これは中性化した場合には、
基礎代謝の効率がよくなり、
さらに食欲が安定して出てしまうこと
によります。
 

避妊していない雌犬は、性周期によって食欲が変動します。

これは主にエストロゲンの食欲抑制作用が関与していると言われています。

発情期には食欲が低下し、発情休止期には食欲が増していき、無発情期には通常に戻ります。

 

研究によると、避妊去勢後にも食事管理と適度な運動を維持することで、十分に肥満が防げるという結果も出ています。
 

実際に、中性化した理想体型を維持する犬たちは、寿命が長いことが多いです。



肥満と病気 

さて、何故肥満はダメかというと、
太り過ぎて、困ることがたくさんあるからです。
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病気が増え、生活の質が低下し、寿命が短くなるからです。

 

2002年に行われた研究では、太りやすいラブラドール48頭を対照にした実験があります。

2つのグループに分け、

1つは自由採食組

もう1つは必要エネルギー摂取量の75%の食事制限組

結果は、平均寿命は、自由採食組11.2、食事制限組13

しかも自由採食組は血糖値や脂質に問題があり、関節症などの病気の発症が多かったようです。

 

同様の研究は、アカゲザルでも行われていましたね。

米国ウィスコンシン霊長類研究センターで
自由採食組と30%食事制限組の実験で
犬の実験と同様に
自由採食組は早期に病気になる率が高く、寿命も短いという結果になりました。
写真は、左列ABが自由採食、右列CDが食事制限組。差が明確です。
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昔から言う「腹八分目」は正しいのです。
しかも「腹八分目」は、食品廃棄問題も減り、地球にも、生き物にも優しい。 


江戸時代中期の観相学の大家である水野南北先生は、
人相から人の運命を当てることが出来ましたが、
たくさん食べる人は、人相が悪くなっていき、病気になり、寿命も短くなると述べています。
人相の悪い人でも、食を節制すると、人相が良くなっていくそうです。


話は戻って、

肥満による病気でよくあるものには、

骨関節疾患

呼吸器疾患

循環器疾患

糖尿病

高脂血症

難産

免疫力の低下

皮膚炎

などがあります。

 

生体は、肥満にならずに健康体を維持するために、さまざまな生理活性物質を駆使して、いい身体を保とうとしています。

 

脂肪細胞からは、レプチンという生理活性物質が分泌されます。これは体重減少作用を持っていることから、発見当時は夢のような物質とされて話題になりました。

マウスにレプチンを投与した実験でも、みるみる痩せたのです。

ところが、

健康体ではレプチンは効果があるものの、

肥満体ではレプチン濃度が花袋にもかかわらず、レプチン抵抗性を示し、効果が無くなってしまうことがわかりました。

 

やはり脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンがあります。これはレプチンと相乗的に作用することが知られていますが、やはり肥満体での効果はかなり低くなってしまいます。

 
褐色脂肪細胞も脂肪をエネルギーに変えてくれる役割があります。
 

他にも多くの因子が、食欲に関係してきます。

脂肪組織から分泌されるTNF-αや胃や十二指腸から分泌されるグレリン、膵臓のインスリンなど、

いろいろあります。

 

さあ、ご自分の愛犬の脇腹を触って、ぷにょぷにょしていないか確認してみてください。

太めまでなら、大丈夫です、健康です。

肋骨がはっきり触れなかったら、減量した方がいいかもしれません。

 

肥満の治療は、一頭一頭個体に合わせた方法が必要です。

 

薬物治療はお勧めしません!

人のように脂肪吸引も犬は行われません。

 

最初に始めることは、日常生活と食事の見直しです。

ダイエット日記をつけるといいでしょう。

 

多くの肥満犬を飼っている方は、まんまるでかわいいと思っています。

でも

それでは減量に成功しません。

皆さん、関節炎や心臓病、糖尿病になってから後悔しているのです。

事前に防げる病気は防ぎましょう。

なにもスリムな体型にしろとはいいません、ぽっちゃりでいいのです。

無理なダイエットはよくありません。

 

避妊手術した雌の肥満は、去勢手術した雄の肥満よりも減量しにくいことが研究で判明しています。
根気が必要です。
雄は、雌よりも若干体脂肪が少なく、筋肉量も多いので、10%程エネルギー消費は多くなります。
犬種でもエネルギー消費量に違いはあります。
たとえば、ラブラドールは、グレートデンよりも基礎代謝量が少ないために、エネルギー消費が少ないです。
加齢でも、基礎代謝量は少なくなっていきます。
筋肉量でも違いが出ます。
飼育環境でも、違いがあります。特に外で飼育している場合には、冬にはエネルギーがより多く必要になります。
ジャーマンシェパードの研究では、1℃変化するとエネルギー要求量が1%変化するという結果が出ています。
また寒冷地の研究では、、1℃違うと、エネルギー要求量は2-3.8%変わるという結果も出ています。 

 

年齢によっても、犬種によっても、減量が必要かどうかはわからなければ主治医の先生に相談しましょう。
実は、肥満には、
単純性肥満
の他にも
病気で肥満のこともあるのです
多いのは、
副腎皮質機能亢進症
糖尿病
甲状腺機能低下症
インスリノーマ

です。
あとはステロイドホルモン剤の多用における薬物性肥満というのもあります。
 

 ここからは痩せるための対策です。
 

食事

人のような極端なカロリー制限や断食は行わないようにしましょう。
 

食事は、適度なエネルギー制限です。

一般的には、理想体重の維持に必要なカロリーの75%に設定します。

理想体重の、です。今の体重ではありません。
 

ドッグフードを食べている犬では、カロリーの少ない減量用のフードへの切り替えが最も楽です。
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手作り食の場合には、カロリーの高い食材から、栄養のバランスを崩さずにカロリーの低い食材への変更を考慮しましょう。

脂肪分の少ない肉、高繊維のでんぷん源(未精製の穀物)、野菜、食物繊維に気を配ります。
脂分の多いものは美味しいため、そそられますが・・、うまく味を考えて作りましょう。
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一般的に食事の量を減らすことには、犬の不満を募らせますので、要注意です。

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脂肪含有量を減らし、食物繊維の含有量をふやすことを心がけましょう。
とはいっても、
体脂肪を減らす脂肪分も存在します。
例えば、
EPAやDHA
ヴァージンココナッツオイル
共役リノール酸など。
これらを上手く使うことも考慮しましょう。 

 

蛋白質

蛋白質の制限はよくありません。

蛋白質の消化に由来するアミノ酸は、ゆっくりと吸収され、インスリン分泌を誘発することがないグルコース供給源であり、空腹の原因となる低血糖の出現も遅らせます。

繊維分

可溶性繊維は、犬の胃内容の排出時間を遅らせるため、栄養素の吸収をゆっくりとして、満腹感もあります。

可溶性繊維は、フードの体積を増やし、満腹感を出します。

 

ただし、繊維分が多すぎると、うんこの量も増えます。

極端に過剰な繊維分は、蛋白質やミネラルなど特定の栄養素の吸収率を低下させる可能性もあります。

 

 

多くの臨床試験では、これで週12%の減量が可能という結果が出ています。

そうです、急には痩せません。

短期間での無理なダイエットでは、長続きしないのです。筋力の低下や心のストレスなどデメリットもあります。
長い目でゆっくりしっかりと、ダイエットに臨みましょう。 
 

 

運動

関節疾患や心臓疾患など運動が制限されている場合以外では、毎日の適度な運動はとても役に立ちます。


皆様が、いつまでも健康体でいられますように。

今日もありがとうございます。


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