体長1mmちょっとの線虫の匂いの好き嫌いを利用して、早期がん発見
C.エレガンスという線虫。

Adult_Caenorhabditis_elegansWikipedia/CC BY-SA 2.5


 3月11日、米国の科学誌PLOS ONEにこういう記事が掲載されました。
「カエノラブディティス・エレガンスの嗅覚を利用した高精度の包括的がんスクリーニング検査」

plosone234PLOS ONE

九州大などの研究チームの論文で、
この線虫を使い、1滴の尿から高い精度でがんの有無を判別することに成功したとの発表です。
線虫類嗅覚探知検査Nematode Scent Detection Test (NSDT) です。


早期のがんも発見できる可能性があることから、
実用化されれば簡単で安価ながん診断が可能になるようです。
報道によると、
実用化された場合の検査費用は1回100円から数百円程度、約1時間半で結果が出るという簡単なもの。
現在企業と組んで検査装置の開発を進めており、
2019年にも実用化を目指しているそうです。



この研究で使われたカエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans) は、
線形動物と呼ばれる線虫の1種で、土の中に生息し、細菌類を食べて生活しています。

svg Wikipedia

体長約 1mm で、体はほぼ透明です。
実験材料として非常に優れた性質をもつことから、モデル生物として広く利用されています。
この線虫を生物モデルとして確立した学者らは、ノーベル平和賞を受賞しています。

今回の研究のきっかけは、ある外科手術でした。
消化管に寄生する線虫であるアニサキスの除去手術を行った際に、
未発見の胃がん部分にアニサキスが集まっていたことを発見したのです。

そこで線虫C・エレガンスを使って、予備実験を行ったところ、
この線虫が、がん細胞の匂いを好むことが判明したのです
線虫は犬のように嗅覚受容体を使って活動することが知られており、
好きな匂いに集まり、嫌いな匂いから逃げる性質があるのです。

虫が腐りかけた植物に好んでついたり、
ドクターフィッシュと呼ばれる魚が、皮膚病変に好んでつくのと似たようなものです。

研究チームは、健常者218人、がん患者24人の尿を1滴ずつ使い、線虫の走性行動を調べました。
その結果、健常者207人と、がん患者23人を正しく判定したのです。
がんの診断確率は95.8%で、がんの種類や進行度にかかわらず判別できたのです。

fig65PLOS ONE

ちなみに、血液による腫瘍マーカーで、同じ患者たちを検査したら16.2~25%と低い診断確率でした。
早く臨床の現場で応用できるといいですね。


最近のがんの早期発見の嬉しいニュースとしては、
15歳の少年が開発した膵臓がん、卵巣がん、肺がんの画期的な早期発見方法があります。

szougan1NAVERまとめ

膵臓がんといえば、これまでは早期発見は困難であり、85%以上が手遅れの状態で診断されるため、
2%未満の生存率しかないと言われてきました。

ところがこの新しい検査法で早期発見できるとなると、
初期のうちに膵臓がんが見つけられることになり、生存率は一気に上がるのです。
しかもたった1滴の尿か血液で、費用も100円もかからないという優れたもの。
将来的には、この技術を応用すれば、さまざまながんの早期発見に使える可能性があるとのことです。
この少年です。
彼は、自分のアイデアを200人のがん研究者に送り、199人に断られ、
たった一人ジョンズ・ホプキンス大のメイトラ教授が関心を持ってくれたのです。

suizou45FaceBook

がんの早期診断も、どんどん便利になりますね。


がん患者さんを匂いで発見するのは、寄生虫だけではなく、
すでに犬で臨床応用研究に入っているものがあります。
それががん探知犬です。
がん探知犬は、大腸がんや卵巣がん、肺がん、甲状腺がんを正確に臭いで嗅ぎ分けることは知られています。
現在も嗅ぎ分けられるがんの種類が増えています。

cancer34news.discovery.com/


ただ、問題はがん探知犬の育成に時間と労力がかかること。


ちなみに
犬の嗅覚受容体遺伝子は、人の約400個と比較して2倍以上の約800個も存在します。
動物で最も多くの嗅覚受容体遺伝子を持つものは、ゾウさんです。
なんと2000個以上。

tokyouni
東京大学 大学院農学生命科学研究科/
科学技術振興機構(JST)


ゾウは、人がいた形跡のある場所から部族ごとの匂いを嗅ぎ分けて、ゾウ狩りする人たちかどうか判別できるそうです。
鼻がものすごくいいと世界が拡がることでしょうね。
でも、匂いの感じ方は、動物それぞれのようです。

とっても鼻がいいゾウさんが、こんなことを・・・・。
しかも顔が嬉しそう・・。
elephant-fail aniLOL

これは、無理・・・。

犬の嗅覚は、匂いの種類によって、
人より1000倍~1億倍も優れているというのに・・・。
どうして・・・。

smell_fail VeryLOL.com

まだまだ奥が深くて、人間には理解できない世界があるのですね。


もう一つ
嗅覚受容体の話ですが、

嗅覚受容体は、鼻だけにあるのもではなく、基本的にほとんどの細胞に存在します。
その中でも、
外部からの匂いを感じるものは、鼻の他に、皮膚、精子、大腸、前立腺などが知られています。

sniff12TheConvasation


こういった嗅覚を動物たちに頼るのではなく、人でやろうという研究も進んでいます。

その一つが、
米国防総省の国防高等研究計画局が関与している「リアルノーズ計画」 です。
これは人が犬と同等の嗅覚を利用できるようにするプロジェクトです。
すでに、匂い感知受容体の生産に成功しています。

将来は、現在犬が活躍している分野、麻薬探知犬や爆発物探知犬、警察犬、がん探知犬、癲癇探知犬などに代わる技術として今後発展していく可能性があります。
さらにあらゆる分野での応用も期待できます。

これは小型化して、安い価格で一般向けに販売したら、大ヒットになるでしょう。

犯罪も激減し、
人も品行方正で、身だしなみが清潔になり、
環境も浄化され、
美しい花々の香りを楽しむことが出来る。

となると、いいですね。
でも、そこは人間、悪用する人たちも出そうです・・。( ̄◇ ̄;)

ともかく、嗅覚範囲が繊細で拡がれば、
世界観が大きく変わっていくことでしょう。
(^O^☆♪

今日もありがとうございます。

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