昔の西洋と東洋の解剖図を見ると、
かなり大きな違いが見られます。

文化の違いや社会的背景、
そして、
人体に対する見方の違いが
解剖図によく表れています。


西洋の解剖図は、昔から詳細に正確に描写されています。
Anatomical_chart,_CyclopaediwikiWikimedia

一つ一つ、見たままを忠実に正確に描いています。
Anatomica2Wikimedia


昔の伝統東洋医学の解剖図は、
正確で具体的な臓器の構造を示さずに、
シンプルなものに描かれています。
(もちろん、絵画の素材や技法などの文化的背景もありますが)
 
臓器の形や位置が、まるで子供が描いたような図になっています。
おそらく西洋医学だけを学んだ医師から見れば、単なる昔の絵程度のものとしか見られないでしょう。

このような図は、
各伝統医学では深い意味があります。

131022_MEDEX_HuaAnatomyNational LibraryofMedicine

見る視点が、西洋と東洋では異なるのです。

例えば、中医学では蔵象学説という考え方に基くことも影響しています。
 
この蔵象学説は、
人体の臓器と生理や病理的な変化の相互関係を明らかにするためのものです。
蔵象の「蔵」は臓器を示し、「象」は外側に現われる生理的現象や症状、精神や意識などを指します。
つまり内臓は、
その形だけでなく、
あらゆる症状や精神などとも密接に関連していることを示すものになります。

この考えに基いているために、
精密な解剖学的描写による構造だけに関心が入り込まないよう、
そして、
その図に隠された真の意味であるからだの中の相互関係や臓器の形態以外の不可視の特徴などに目がむけられるようになっています。

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こうすることによって、物質的な範疇を越えた、
生理的・病理的・エネルギー的な理論体系にも目が向けやすくなります。

伝統医学の解剖図は、
一見なんとも稚拙に見えてしまうのですが、
実は非常に高度に体系化された意味深いものなのです。
解剖図であって、解剖図ではないのです。


この図は、道教の内経図、人の解剖図には見えません。
身体の内部を小宇宙と見なして、
気が循環する世界を描いています。
頭部には霊峰が連なっています。
督脈と任脈を通りエネルギーが循環する様子が描かれています。


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チベット医学では、
「四部医典」(ギュー・シ)といって、絵で表したタンカという医学図の全集があります。
ここに描かれている図には、
例えば
プラーナの渦やチャクラなどに代表される西洋医学では知りえない深い解剖図が見られます。

Med-12-1thangka.de


Med-14-1thangka.de
 


西洋医学では、肉眼で見える詳細な解剖学的構造を重要視します。
こちらでは、臓器の形と機能に主眼が置かれます。
 
時計の針に喩えて説明すると、
西洋医学では針の大きさや形、機能というものを重要視します。
ですから針の図を描くときには、精密なものに描かれます。
一方、
伝統東洋医学では、針とそれを動かす時計内部との関係や針があることによる時計全体の仕組みの方を重要視し、
さらには時計の作り手の意図までも洞察して描かれていますので、

図を描くときにはあまり精密さを求められません。

 
私たちにとっては、このどちらの図も概念も重要なのです。


私たちは両者の価値を知ると、
まず西洋医学の精密な解剖学をしっかりと学んだ後で、
次に伝統医学の図を見ると、とても有用であることがわかります。


このように両者が統合されることによって、より広い視野が開かれることになります。


参考文献
臨床家のためのホメオパシーノート 基礎編 (Nanaブックス)
森井 啓二
ナナ・コーポレート・コミュニケーション
2010-09-18



今日もありがとうございます。


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