PATR1からの続きです。
(ここから先はある医療従事者の人からのリクエストによるもの)

米国の医師の実態調査では
医師の過半数

燃え尽き症候群に陥っている
という調査結果は衝撃でした。

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それは職場の過酷な環境も影響しているのでしょうか。

医療従事者は
常に仕事内容が命に関わっているため
精神的に追い詰められてしまうことも多いようです。

命と真剣に向き合うというのは
テレビでみているような
天才外科医がなんでもぱぱっと治してしまう
華やかなお仕事ばかりではありません。




こんな報道もありました。

秋田県内勤務医15%、過労死ライン超 24時間以上拘束は半数
秋田魁新報

秋田県内の病院で時間外労働をした勤務医のうち15%が、月80時間の「過労死ライン」を超えていたことが、県医師会の調査で分かった。全体のほぼ半数は、勤務日の最長拘束時間が24時間以上だったと回答。医師の長時間労働が社会問題となる中、県内でも勤務医が厳しい労働環境に置かれている実態が浮かび上がった。
時間外労働をした医師に時間を尋ねたところ、80時間以上と答えたのは15%で、このうち8・1%は「100時間以上」だった。割合が最も高かったのは「20時間以上40時間未満」で26・6%。平均は40・3時間だった。



獣医師も同じこと。


人間だと、
眼は眼科、
歯は歯科、
肛門は肛門科
などと専門別に分かれていることが多く、

また一次診療と専門の二次診療
夜間診療など
役割分担が確立されています。

だから、
医師は、自分の専門分野の実践と勉強が中心になります。
命に直接関わらない分野もあります。



獣医師は、
外科も内科も、代替医療も含む、
基本的にあらゆる分野の実践と勉強が必要になります。

「命」の全責任を主治医がしっかりと担うため
医師や獣医師は勉強が大好きです。
空き時間や仕事以外の時間は
ほぼ勉強していることが多いです。


命に関わる仕事は
精神的にハードワークになりがちです。

最近は、
連携した医療や夜間病院の存在、
チーム医療などが一般的になってきたために
あらゆる面が大幅に改善されたものの、

一昔前までは、
夜も休日も無い過酷な勤務時間と勤務内容
大きなプレッシャー
低めの賃金

労働条件は過酷な仕事でした。


私も
すでに一昔前の人ですから
50歳になるまでは、
ほぼまともな休日がありませんでした。

昔は
家にも帰れずに
毎日ダンボールを床に敷いて寝ているということも
多くの獣医師の間では
一般的にあった光景です。

食事と寝るとき以外は
すべて仕事
という獣医さんは昔は一般的でした。


以前は夜間救急病院もないために
夜中夜明けも毎日かならず電話でおこされる。
しかも
急患の電話ではなく、
問い合わせが多く
ほとんどは患者さんではない人たち。

夜中の1時に猫の飼い方を教えてくださいという問い合わせがあったり
夜中の3時に爪を切ってほしいという電話までありました。
明け方の4時に、目ヤニが多いので目薬だけ欲しいという電話もありました。

それならまだしも
夜中の急患依頼の3割はすっぽかしです。

夜中の3時に病院を開けて、
医療機器を稼働させて待機、
ずっーと待っても来ない。

待ちくたびれて電話すると、
「ちょっと元気出たから行くのやめました」という
無言キャンセルもとても多かったです。

私の場合には
仕事に加えて
世界で誰もやったことのない新しい医学書の編纂も行っていたため
夜中は寝る代わりに
ずっとあらゆる論文を読み続けていました。
日本語の論文ではなく
世界各国の言語の医学論文です。
これが結構困難な作業ばかりで
この時期に完全に目が壊れました。

同じことをはじめた英国の獣医さんは
首を吊って亡くなっています。



現在では
各地の夜間救急病院と連携しているので
とてもとても安心です。


休日でも仕事での電話は必須です。
昔は、
学会があっても、
行きたいところがあっても
担当している動物が重症であれば行くことはできませんでした。

このあたりも最近は
大幅に改善され
ちゃんと休めるようになりました。




でも
不思議なことに
どんどん便利に、楽になっているにもかかわらず
調査では
現在の方が医療従事者の燃え尽き症候群は増加しているのです。


医師と同様の燃え尽き症候群は
海外の獣医師のデータで
明確にされています。

日本以外の
先進国では、
獣医師の自殺率は、非常に高いことでも知られています。


英国の以前の調査では、
全職業中で獣医師が自殺率第一位でした。

1990年代の英国の報告では、
一般的な職業と比較して自殺率が約6倍高く
2010年の英国サザンプトン大臨床神経学の研究調査では、
一般的な職業の4倍の自殺率でした。


米国の職業別自殺率
第一位は医師。一般的な職業の1.87倍
第二位は歯科医師。一般的な職業の1.67倍。

これをみると6倍という数字がいかに高いかがわかります。

この報告でも
命を助けなければならないという強い責任を負うプレッシャーによるものとされています。
医療従事者は、精神力が強くなければなりません。



米国で獣医師11,627人を対象にした、
精神面での大規模調査の結果が今年報告されています。

それによると、
うつ病を発症したことのある獣医師は、3,655人(31%)
自殺を考えたことのある獣医師は、1,952人(17%)
という驚くべき結果でした。

普通の職業では有り得ない高い数字。
17%が自殺を考える職業って
あまりないのではないでしょうか。



日本の獣医師では、
過酷な環境、
低い収入
精神的プレッシャー
など
環境整備された米国や英国よりも過酷な環境です。


でも、
日本では
少なくとも私の周りでは
精神疾患や自殺の話は全く聞いたことがありません。


日本の獣医師は、性格が明るい先生が多いのです

みなさん
単なる動物大好きな変態だから大丈夫と自称する先生はとても多いです。

過労死で若くして突然死する先生は、
周りにもいました。

でも、不思議なことに
過酷な環境の時には、
燃え尽き症候群はほぼ無かったような気がします。



最近は、
専門病院や二次診療病院、夜間緊急病院なども増えて、
なにもかも一人で抱え込まなくても
チーム医療が可能となりました。


それで、
獣医師の環境は、
この20年でとても大きく改善されたのです。



しかも、
動物たちが皆とてもかわいい。


それが何よりのご褒美で
とても大きな癒しにつながっています。



一番の癒しは、
動物たちと共にいられること。


そして、
動物たちを治すことが出来ること。


結局は
動物を治していると同時に
こちらも
癒されているのでした。


動物好きな人にとっては
とてもやりがいのある仕事の一つだと思います。

(*´∇`*)

(これは
ある獣医さんからのリクエストで書いたものです。)

今日もありがとうございます。


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