世界中を回って新しい生薬を探し回る生薬ハンターや民俗学者の話によると、
シャーマンも高齢化が進み、
若い世代のシャーマンは減っているようです。



世界で三番目に高い山カンチェンジュンガ峰
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その山麓シッキムにレプチャ族が暮らしています。
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レプチャ族は顔も言語も風習も日本人との共通点が非常に多く、
自然界の八百万の神を信じる精神性の高い民族です。
 
その
レプチャ族最後の精神的指導者でありシャーマンであったサムダップ・タソが
最近亡くなり
古来から受け継がれてきた部族伝統儀式と相伝がついに途絶えてしまいました。
 
タソの後を引き継ぐシャーマンがいなかったのです。

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bbc11BBC news


 
シャーマンは、
普通の職業のように誰もが引き継げるわけではなく、
高い精神性と天性の資質が必要です。
 
 
タソの死は、
レプチャ族だけでなく、
人類の遺産の喪失でもありました。 



複数のシャーマンたちは、
部族の人口減少に危機感を抱き、
シャーマンの役割を継承していくには、
部族を超えて、
地球部族の中から新しいシャーマンたちを育てる必要がある

ことを実感していると語っています。 





この話で、思い出すのが、
メキシコのシャーマンであるマリア・サビーナ
 
彼女は、
部族の枠を超えて
自らの困難と引き換えに
次世代に大切な儀式を伝える活動に専念し、
静かに消えていったシャーマンの一人です。



今日は、マリア・サビーナ(1894年-1985年11月23日)のお話しです。



1950年代に
アメリカの幻覚性キノコ研究者R・ゴードン・ワッソンとフランスのキノコ分類学者ロジェ・エイムは、
メキシコのキノコの実地調査をおこないました。

その時に
先住民の村で体験したシャーマン儀式の記録が
1957年のアメリカのLIFE誌に発表されました。

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儀式には
「ロス・ニーニョ・サントス(小さな聖者たち)」
と呼ばれる聖なるキノコで作られた薬草処方箋が用いられました。

この儀式に使われたキノコは、
「テオナナカトル」とも言われ、

モモエギタケ科のモモエギタケ属、シビレタケ属、オキナタケ科のキコガサタケ属、ヒトヨタケ科のワライタケ属などのキノコを混ぜたものであることがわかりました。

これらキノコの混合薬からは
幻覚作用の強いシロシビンとシロシンが含有されています。

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次の写真は、約1700年ほど前の遺跡から出土されたものです。
キノコの像に神が彫られています。

この地域一帯の各部族にとって、
キノコは神と対話する聖なる植物なのです。

白人がこの地に侵入してから、
数百年間はキノコの儀式は禁止されていましたが、
途絶えることなく、
伝統は密かに守り続けられていました。

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シロシビンは、
摂取後は速やかに加水分解されてシロシンとなり、
腎臓・肝臓・脳・血液に分布します。
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摂取量にもよりますが、
摂取後にまず悪寒や吐気、眩暈、酩酊感、しびれなどが始まり、
その後
視覚異常が現れ始め

さらに進むと、
幻覚、幻聴、精神錯乱、混迷状態などが顕著に現れて
時間や空間の認識さえ困難となります。



ベニテングタケやテングタケに代表されるイボテン酸は、
最終的に意識が消失していく傾向にあるのに対し、

シロシビンでは
LSD様の過覚醒が発現します

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アメリカでは、
強迫性障害や心的外傷後ストレス障害(PTSD)といった神経性の病に対するシロシビン処方の治療臨床試験が行われています。

群発性頭痛に一定の効果を得たという報告もされています。




話は戻って
コロンブスのはるか以前からずっと続いてきた「聖なるキノコ」の儀式
1955年、はじめて"白人"の部外者ゴードン・ワッソンに授けたシャーマンは、
メキシコのマサテカ族の女性シャーマンである
マリア・サビーナです。

本名ドニャ・マリア。

地元では尊敬の念をこめてサビナ(賢女)を入れて
マリア・サビナと呼ばれていました。 
 
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マリアは、
幼少期に父親を亡くし、
幼い頃から畑仕事をして暮らしていましたが、
とても貧しく、
食べるものが無いこともよくありました。

6歳になって、
初めて聖なるキノコの集会「ベラダ」に参加しましたが、
それも食べるものがなく、
飢えをしのぐためにキノコを食べに参加したのが最初の体験でした

その後
思春期から40歳代で二番目の夫が亡くなるまでは、
キノコの儀式にはほとんど参加出来ませんでした。

キノコの儀式に参加する前の一定準備期間は、
性行為が禁止されているからです。



マリアが再び儀式に参加した時に、
キノコの力によって
病に伏している姉の横にいる死神と会話をして、
死神から姉の病気の治療法を教えてもらい、
(死神が来るのは、死ぬ時ではなく、死から蘇る役割を持っている時です)

さらに
高次元の霊的存在から
キノコの知恵と言葉を理解する力を授けてもらった
と言います。



その力によってマリアの名声は拡がっていき、
遠くの村からもマリアの儀式に参加しにやってくるようになりました。
こうして、
マリアは日常を霊的活動に費やしました。


ある時
マリアは聖なるキノコによるビジョンで、
キノコの儀式のことを調べに誰かが彼女の元を訪ねてくることを知りました。

そして、
そのビジョンの中で彼女は、
キノコの儀式を授けるように指示されました。

それからまもなくして
ゴードンたちがマリアの元へやってきたのです。

マリアは、役場に出向き、
部会者に部族の儀式を公開する許可を求めました。

役場で、許可を得たマリアは、
ゴードンたちを儀式に招き入れたのです。




マリアから聖なるキノコを与えられたゴードンは、
色とりどりの幾何学模様や宮殿、
飾り立てた馬車を神話に出てくるような動物が引く光景
などを次々と見て、
さらに幽体離脱して外の山を見下ろして、
はるか彼方の山道をすすむラクダのキャラバンまで見ることが出来た
と記述しています。


その時の体験は、
彼の魂を根幹から揺さぶるほどの
深遠で壮麗、聖なるものであったと記録しています。


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この「聖なるキノコ」の儀式を執り行うマリアの歌声をゴードンが録音したものは
CD化されて、

彼女の死後、
シロシビンを発見した化学者アルバート・ホフマンの
100歳の誕生日を記念して
2006年に再び発売されています。


心や身体に病のある人の前でマリアが歌うと、
霊が現れて、
病気の治療法などを伝えてくれたり、
キリストの霊が現れることもあったといいます。



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マリアは、 

シロシビンを含むキノコの儀式について次のように述べています。
 
「私たちの世界には、
それを越えた次元の世界があり
それは遠くもあり身近でもある、目に見えない世界です。

そこは神のいる世界で、
亡くなった人たちや聖人、精霊たちが住んでいます。
 
その世界には、時間は無く、現在も過去も未来もあり、
あらゆることが既に在り、
あらゆる知恵と知識があります。

すべてのものが一つのものとして存在します。
 
その世界には、独自の言葉を持っており、
私はその世界の言葉を伝える役割があります。
 
私は、聖なるキノコの力によって、その世界へと導かれます。
 
私が尋ねたことを、彼らは答えてくれます。
この旅から戻ると、私は見聞きしたことを伝えます。」



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また、
聖なるキノコ「ロス・ニーニョ・サントス」については、こうも述べています。
 
ロス・ニーニョ・サントス(小さな聖者たち)は、治療する力を持っています。
熱を下げて、風邪を治し、痛みから解放します。
体から邪悪な霊気を取り出し、病気を取り除きます。」





マリアのその後
 
ライフ誌では、エバ・メンデスという仮名での記事にしたにも関わらず、
写真が多数掲載されたため、
すぐに本名がしられてしまいました。
 
マリアの存在、
そして
テオナナカトルの幻覚作用が世界に知られたことで、
多くの欧米人たちがこの地に殺到しました
 
ジョン・レノン、ミック・ジャガー、ボブ・ディランなど有名人も次々とマリアのもとを訪れています。
マリアのドキュメンタリーも作られました。

 

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マリアは、
彼女のもとを訪れた外国人を受け入れ、
シャーマンの聖なるキノコの儀式を公開しました。

しかしながら、 
 
この聖なる儀式に敬意を払わない興味本位の人々までも訪れるようになり、
部族の人々を怒らせてしまいました。


そして
マリアの家と店は焼かれ、
マリアは村のはずれに追放されてしまいます。
 
マリアは
息子が殺される前に、その死と殺す相手、凶器であるナイフもすべて見通しました。
 
彼女は、
「ビジョンの中で、すでに事は成就されてしまった、息子に忠告しても無駄であろう」
と語っていました。

そして
息子オレリオは殺されました。




長い歴史の中で部族内だけで執り行われてきた聖なる儀式
外部に漏らした行為が原因と言われています。

マリアは、
外の世界に知らせる時期だとのビジョンに忠実に従いました。

その結果は、マリアにとってはつらいものとなりました。 
 

 
マリアはその後も、
86歳の頃に三度目の結婚をして
1985年に91歳でこの世を去るまで、
聖なるキノコの儀式を次世代に伝える活動を行い、
キノコを用いた聖なる儀式を通した精霊との交流を実践し続けました。





すべての植物には、聖なる力が宿っており、
私たちは、植物の力を決して誤用してはなりません。

植物に敬意を払い、
正しい理性の元で崇高な目的を持って利用すれば、
力を与えてくれます。

マリアは、
部族を垣根を超えて、
それを
私たちに教えてくれた貴重なシャーマンの一人です。



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