ジクロフェナク。

日本でもよく使われている痛み止めの薬の成分です。
内服薬ではボルタレンとか
外用薬ではフェイタスZなどがよく知られています。


こういった薬が
野生動物にとっては命取りになることがあり、
種そのものが絶滅の危機に晒されてしまうことすらあります。


これはインドのハゲワシ。
美しい鳥です。
この鳥も
医薬品の犠牲になった鳥の一つです。
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savingrspb.org.uk


かつてのインドでは、
ハゲワシが最も一般的にみられる野鳥でした。


ところが
1990年代に入ると
突然ハゲワシたちの謎の大量死が始まりました。

そして
その生息数は一気に
97~99%激減。

すぐに手を打たないと絶滅する直前の状態までいきました。

2004年になって
大量死の原因が判明しました。

調査の結果、
ハゲワシの死因は、
ジクロフェナクという薬を与えられた牛の死骸を食べたことが原因でした。
牛の体内には服用したジクロフェナクがわずかに残留していたのです。

このジクロフェナクが残留した肉を食べたハゲワシは、
一気に元気を消失します。
vulture_tcm9-56277rspb.org.uk

体内では
急性中毒性腎炎(内臓性痛風)を引き起こし
24時間以内に死んでしまっていたのです。

この写真のハゲワシも間もなく死亡します。



当時
牛にジクロフェナクは魔法の薬として使われていたのです。
1%ほどの牛にジクロフェナクが残留していましたが、
猛禽類全体を絶滅させるには十分な数でした。


牛は、大切なものとされていたために、
亡くなると
鳥葬と言って鳥たちに食べられて天に召されるという風習があったのです。

現在インド、ネパール、パキスタン、バングラディッシュでは、
動物用のジクロフェナクの製造・使用は禁止されています。


いまだに
鳥には毒性のある薬物がいろいろと使われています。
サルファ剤やアミノグリコシド系抗生物質、抗コクシ剤、消毒剤、殺虫剤など。

中毒量ではないからかまわないというのが
現在の状況です。

ほんとうに中毒量でなければいいのでしょうか?


こちらはこの実態を描いたショートムービー
The Last Hope」(最後の希望)です。

lasthopeVimeo



人では、
化学兵器の開発・生産・貯蔵・使用を全面的に禁止する化学兵器禁止条約というものがあります。

化学物質で
健康を害したり
死に至らしめることはあってはならないからです。


それは人だけでなく
動物たちにも広げるべき課題です。


Indian-vulture-on-groundarkive.org


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