南アフリカ共和国のケープタウン
アフリカ大陸先端の大都市です。

夏は暑く、乾燥しています。
アフリカの半島は
東南から乾燥した強い風が吹いてきます。
この風は
淀んだ空気を清浄にしてくれるために
「ケープ・ドクター」と呼ばれています。

秋からは
温暖な海から吹いてくる風を
テーブルマウンテンがうけ止めて恵みの雨を降ろすため
ケープタウンは砂漠に囲まれているのもかかわらず
地中海気候に似てオアシスのような地域になっています。

その水の多い大地の美しさに惹かれて
人口はうなぎ上りに増加していきました。

プールもあり、水上公園もあり、緑豊かな庭園や農園まで作られました。


いま
この南アフリカの大都市ケープタウンで
未曽有の水不足問題が発生しています。



人口増加と記録的な干ばつが重なり
かつてないほど深刻な渇水危機を迎えています。


南アフリカ政府は、
水源が枯渇して、水道から一滴の水もでなくなる
「デイ・ゼロ:Day Zero」
と呼ぶ緊急事態は避けられないと警告しています。

dayzerotheguardian.com



デイ・ゼロは
今のまま
雨が降らなければ
5月11日と予想されています。


現在
市民の水の使用については厳重に取り締まりを強化しています。

洗車などには
250ドルという厳しい罰金が科せられます。

自然の水源からの水泥棒に対するパトロールも強化されています。

wwnytimes.com

政府は
市民に対して数ヶ月前から
繰り返し節水の呼びかけを行ってきました。

でも、
多くの人は、それを深刻に受け止めることなく
自主的に使用制限するような人はいなかったのです。

今まで水が豊富だった都市では
水は
誰もが好きなだけ使う権利があるという感覚を持っているのです。


そのため今年に入ってからは
市はより厳しい節水を求め、
市民に水の使用量を1日50リットルに留めるよう要請しました。

シャーワーを1回浴びると、60リットルは使ってしまいます。
トイレ1回につき、10リットルは使います。


市民が一丸となって節水しなければ
確実にデイゼロが近づくことが確定的なのです。


ケープタウンの水がめTheewaterskloofダムの衛星写真です。

過去100年以上で最悪の干ばつの影響がよくわかります。


2014年1月の状態
これが本来の状態です。
dam1nytimes.com

2016年1月の状態
dam2nytimes.com

2018年1月の状態

dam3nytimes.com


これは地上から見たダムの様子
まるで砂漠です。

theewaters-kloof-dam-696x522thesouthafrican.com




こちらは4つすべてのダムの状況


ttta
ttttheguardian.com




NASAのデータによると、
現在の4つのダムの貯水率は現在26%
貯水率が13.5%になった時点で
断水を決行することになっています。





こちらは
平年の南アフリカの年間降水量のグラフ。

でも
ここ3年間は
最悪の干ばつによって
1月から4月までは雨が降っていません。
今年も同じ状況で
雨は期待できないようです。

ratheguardian.com




ケープタウン市内では、
人が集まる場所に、
緊急の給水ステーションを200カ所準備していて
長蛇の列ができています。


rrnytimes.com

この2ヶ月後には、
最悪の場合、
市民400万人が大行列を作って
飲料水の配給を受けることになるかもしれないのです。
wwwwnytimes.com



実は
このような気候の変動による水不足は
世界中で起きています。

中米グアテマラでは
アテスカテンパ湖が干ばつの影響で完全に干上がりました。
この湖を生活の基盤としていた住民たちは
水と食料源を絶たれ
飢えに苦しみ、
移住を余儀なくされました。

lake-guatemala-covernationalgeographic.com.au

メキシコ合衆国の首都メキシコシティでは、
2000万人を超える市民が、
すでに厳しい取水制限を受けていて
水道水は一日のわずかな時間しか使うことが許されていません。
また5人に1人は週に数時間しか使えない状況です。

ブラジルのサンパウロは南半球最大の大都市ですが
干ばつの影響によって貯水池の水が激減し、
2015年には流水量の急激な減少により水道管に泥が入る事態となり、
水道水が自由に使えなくなりました。
緊急出動の給水車は略奪に遭い、
多くの家庭では
水道水の使用を週2回数時間までという厳しい取水制限が課せられました。
デイ・ゼロを覚悟した直後に
恵みの雨が降り
完全な断水によるパニックを寸前で回避することができました。

でも
またいつ突然水が無くなるかは
わからない状況です。

brajireuters.com




人口の多いインドでも、
複数の大都市で水不足が深刻な問題となっています。

オーストラリアのメルボルンでも、
この先10年ほどで深刻な水不足が発生する可能性があるとの予測を発表しています。

インドネシアの都市ジャカルタでは
地下水を汲み上げが過剰となった影響で、
乾燥が進み、
海面上昇よりも速いスピードで土地が沈み始めています。




干ばつだけでなく
地下水にも深刻な危機が迫っています。

世界の地下水は
今後数十年のうちに激減する可能性がある
と研究結果が発表されています。

私たちが食べている食料のほぼ半分は、
世界中の乾燥した地域で生産されています。

このような地域での食料は、
地下水を過剰にくみ上げることによって生産されていますが、
地下の帯水層と呼ばれる水を貯めている層の水量が
急速に減少していることが判明しているのです。

帯水層が枯渇に近づいた場合、
世界の食料供給は甚大な影響を受け、
さらに
この貴重な水源に頼っている人は18億人もいるのです。


今後
水は
石油よりも貴重になるかもしれません。


米国の情報機関を統括をする米国国家情報長官室は、
2040年までに世界の水資源の供給が
不足するリスクが高いことを警告する報告書を発表しています。

セラゲルディン元世界銀行副総裁 は、
「20世紀は領土の取り合いで争う時代だったが、21世紀は水の確保で争う時代になるだろう」
と予測しています。

歴代の国連事務総長たちも
水不足が紛争の火種を内包していることを述べています。

民間のシンクタンクである世界水会議WWCによって運営されている
世界水フォーラムにおいても
近い将来、水を巡る世界的な紛争が起こる可能性が高いことを指摘しています。



3月22日は「世界水の日」。


海水淡水化技術の普及が期待されます。




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2017-12-18