モンゴル

美しい大地に
広大な山岳地帯、そして果てしない広がりをもつ草原。

そして
美味しい空気。

その大自然に暮らす遊牧民たち
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ユーラシア大陸のど真ん中にあります。

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まるで環境汚染など無縁かのように思えるモンゴルですが、
首都ウランバートルの大気汚染は、
中国の大気汚染大都市として知られている北京の大気汚染の5倍の汚染に達し
世界基準に比較すると数十倍の汚染になっています。

真冬になると
道路を渡るときにも
歩行者信号が青なのか赤なのかさえ
見えない状態になります。




それには
モンゴルの厳しい環境で起きている「ゾド」と呼ばれる気象現象が影響していました。

ゾドは、
大雪による厳しい寒さが続く現象です。

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近年の気象の変動によって
ゾドは激しく頻繁に発生するようになりました。

一昔前までは
ゾドは12年に1度くらいのペースで発生していたのですが、
ここ30年間は
4年に1度以上の頻度で発生しています。


気候の変動で
昔は四季があったモンゴルでも
最近は
三季になってしまったという見解もあります。


エルニーニョ現象も大きくかかわっています。
エルニーニョ現象によって
モンゴル一帯は、夏の間に低温と少雨が続く傾向となり
家畜が冬を越せるだけの十分な牧草が育たなくなります。

そして
冬になると
深刻な大雪と極寒のゾドに見舞われてしまうのです。


乾燥した夏の干ばつによって牧草が無くなった時期に
マイナス40℃以下になる極寒のゾドがやってくるのです。

マイナス58℃にまで下がった地域もあります。


家畜が越冬するための飼料も無くなり
体力が消耗している家畜たちを
ゾドが襲い、
次々と亡くなっていきます。


2010年の厳しいゾドの時には
900万頭を超える家畜が亡くなっています。

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遊牧民にとって
家畜は唯一の財産です。


遊牧民たちは、
ゾドによる家畜の大量死に備えて借金をしたり
家畜を安い価格で投げ売りしなければならなかったり、
自分たちの食べるものを抜いて
生きていくためのギリギリの生活をしながら
耐えしのいでいます。


この30年だけでも
ゾドによって60万人を超える遊牧民たちが
家畜を失い
首都ウランバートルに移住せざるを得ない状況になっているのです。


ゾドによって家畜を失った遊牧民の多くは、
慣れない大都市に移住しても
なかなか職を探すことは困難であり、
生活は困窮し、
アルコール中毒になったり
犯罪を犯す人たちも出ています。


首都ウランバートルの都心には
現代的な高層ビルが立ち並んび、
その周りは旧ソ連様式のコンクリート建物群が拡がります。
そして
さらにその周りには
20万戸ほどの移動式住居ゲルが密集しています。
ゾドによって家畜を失った遊牧民たちが持ち込んだゲルです。


遊牧民たちが持ち込んだゲルの中央部には
ゲルの生活に欠かせない
長い煙突が付いた石炭ストーブがあります。

首都ウランバートルでも
冬は気温が氷点下30度まで下がるため
ゲルで暮らすためにはストーブは必須なのです。

彼らはこれで暖を取り、炊事を行います。

WHOよると、
ウランバートルの大気汚染の8割は
ゲルのストーブによるものとの調査結果が報告されています。

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夏(左)と冬(右)では
大きな違いです。
photo_top独立行政法人国際協力機構


ウランバートルは、
山に囲まれた盆地で、
あまり風が吹かず、
汚染された空気が停滞しやすい地形になっていることも
大気汚染が悪化した要因になっています。


石炭ストーブから発生する煙は
人体に有害な微小汚染物質(PM2.5)が大量に含まれています。

ウランバートルの空気では
PM2.5が1立方メートル当たり1985μgに達しました。

WHOの安全値は、25μgです。

PM2.5は微粒子のため
通常のマスクではあまり意味がありません。

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現在
モンゴルでは
大気汚染に関連した子供の肺炎が激増しています。

モンゴル国内における乳幼児の死因の第2位は
大気汚染関連の肺炎であり
死因全体の15%を占めている状況です。




この悲惨な状況は
決して他人事ではありません。

対岸の火事ではなく、
私たちが将来直面する環境問題の縮図のようなものです。

私たちは同じ星に住んでおり
確実にすべての地域に影響を及ぼしていきます。



私たちにできることはたくさんあります。





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