再掲です。

カムイユカラ

「アイヌ神謡集」という本があります。

文字を持たなかった北海道のアイヌ民族に伝わる
伝統的な神にささげる叙事詩を
文字にして残した本です。


この本を作り上げたのは、
知里幸恵さん

Yukie_ChiriWikipedia

北海道登別市出身のアイヌ人女性。
7歳のときに旭川に移り住み、
19歳になるまでは
母ナミの姉で養母となる金成マツと祖母のモナシノウクと共に旭川で暮らしました。


祖母のモナシノウクは、
ユカラの歌い手ユーカラクルであり、
幸恵さんはユカラを聞いて育ちました。


幸恵さんが15歳の時に
言語学者の金田一京助氏が
旭川の幸恵さんの家に泊まることになりました。


金田一氏は、
アイヌの伝統文化を記録するために、
この地を訪れた時のことです。


この時に金田一氏のアイヌ研究の聞き取り調査に同席して
幸恵さんは
アイヌ文化への強い情熱、
カムイユカラの大切さを
改めて知ることになります。





この時代
少し前には、
日本の政府は、北海道を日本の領土として確立させるために力を入れていた時代でした。
明治政府は、1899年「北海道旧土人保護法」を制定しています。
旧土人とは
アイヌ民族のことです。

表向きのアイヌ民族保護とは裏腹に
アイヌ人たちは
明治政府に自分たちの土地を強制的に没収され、

その没収されてしまった自分たちの土地は、
日本人である「開拓民」にタダ同然の価格で払い下げられていきました。


さらに、
漁業権・狩猟権など命に直結する「権利」でさえ、
明治政府によって収奪されてしまいました。



こうして
アイヌ人たちは
生きるすべを奪われて、
極貧の旧土人という立場に追い込まれてしまいました。


アイヌ民族もアイヌ伝統文化も
消滅の危機に瀕していったのです。



アイヌ人たちは 
生きるすべを奪われ、
生活に困窮し、
精神的にも大きな絶望を感じていた時代です。

AinuGroup Wikipedia




アイヌ人の幸恵さんは、
アイヌ語も日本語もできる能力がありました。

それを活かして
カムイユカラの文化を後世に残すために
さっそく
アイヌ語の口語から日本語の文字に翻訳する作業を始めました。

金田一氏は、
幸恵さんにローマ字でカムイユカラを記録することを勧めました。 


幸恵さんは、
金成マツのもとにローマ字を習いにきた名寄出身の村井曾太郎と親しくなっていきました。
そして、
翌年婚約します。


でも、
結婚前に
使命を果たすべく
東京へ単身上京し、
金田一宅に身を寄せて翻訳校正作業を続けました。

幸恵さんは、
思い心臓病を患っていたためにたいへんな作業だったと思います。

夏になって
はじめて養母のマツに
自分の心臓が悪いことを告げる手紙を書きます。 


そして
9月4日には
両親にも自分の心臓が悪いことを初めて告白します。


その後病院で、
医師に結婚は無理だと告げられます。


重度の心臓病を患ったままの状態で
幸恵さんは
自分の使命を全うすべく
アイヌ文化の復興に携わります。


たいへんな翻訳・編集・推敲作業を経て
「アイヌ神謡集」は
1922年(大正11年)9月18日にようやく完成しました。



そして
念願だった「アイヌ神謡集」が
完成した後で
夕食を食べて、

その後、
夜8時30分に

幸恵さんは

息を引き取りました。



享年19歳。 
完成直後の死でした。




「アイヌ神謡集」は翌年に出版され、
当時新聞にも大きく取り上げられました。


文字を持たないアイヌ民族にとって
画期的な偉業でした。



文字を持たないがゆえに
アイヌ文化は
とても素晴らしい文化がありながら
本土の日本人には
全く理解されてこなかったからです。


アイヌ人に大切な動物への思いや、
アイヌ人の日々の幸せと祈りが
すべて時代の波の中に消えかけたその時に
文字として後世に残されたのです。



この本によって
多くの日本人たちが、
アイヌの伝統文化や言語、風習について知る
とても大きなきっかけとなりました。



そして
何よりも
絶望の中にいたアイヌ人たちに
アイヌ民族としての民族意識を高め、
誇りを取り戻す力を与えたのです。




016_s旭川市




1923年「アイヌ神謡集」が出版され
1970年になって絶版となっていた「アイヌ神謡集」が再び復刻されます。
1977年に「アイヌ神謡集」が再度、岩波文庫として復刻され、

現在では誰もが手にすることが出来ます。

51Y-ycbWs0LAmazon.co.jp



最近では
テレビにも取り上げられ
再びアイヌ民族の持つ素晴らしい文化が
再認識され始めています。


私たちは、
アイヌ民族の持つ素晴らしい知恵と文化を再認識するとともに

日本人がアイヌ民族にしてしまったことを
もう一度深く考えなければなりません。


トミンカリクル
カムイカリクル
イソヤンケクル
カムイラメトック パセカムイ
ネプ エカルクシュ
・・・・
(海の神が自ら謡った謡アトイカ トマトマキ クントテアシ フム フムより)

sachie bunka.nii.ac.jp



私も
まだまだお伝えしたいことがたくさんあります。
その一つは、君が代の解釈という形でお伝えさせていただきました。

君が代は
誰もが知っている国歌なのに、
その真意が全く理解されないまま封印されてきた歌です。


さらに、
伝えておきたい大切な日本の叡智がまだまだあります。



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森井 啓二
星雲社
2017-12-18