前回の
犬の乳腺腫瘍と乳腺がん
に続いて
猫の乳腺腫瘍と乳腺がん
のお話です。
犬と猫では大きく違います。
犬では良性腫瘍が多いのに対して
猫では90-95%が悪性腫瘍です。
また猫の乳腺に入る血管が複数あり、
肺などの臓器へと転移する確率も高い構造になっています。
主な転移は、
腫瘍に近い領域のリンパ節と肺に起こります。
その他には
肝臓、脾臓、腎臓、副腎、筋肉、皮膚、脳、遠隔のリンパ節などに転移した報告例があります。
猫の場合
乳腺がんが発見された時点において
肺転移が確認されるのは
およそ22%ほどと
犬と比較して極めて高い転移率です。
ただし、X線検査では直径数mmの小さな転移がんは発見できないので、
実際の転移率は
もっと多いとされています。
そのため
早期発見早期治療が基本であり、
犬のようにおっぱいにしこりが発見された後も
ゆくりと経過観察してしまうと
命取りになってしまうことがあります。
猫の乳腺は
基本的に４対８個あります。
このほかにも
未発達な乳腺が、
内股の鼠径部に見られることがあります。
猫の乳腺腫瘍は
皮膚腫瘍、リンパ腫についで
三番目に多い腫瘍で
猫の発生するすべての腫瘍の17%を占めています。
一般的に
高齢の雌猫に多く見られます。
ごく一部（1～5%)は雄猫に発生します。
発症は
6歳から増加して
ピークは10～11歳になります。
シャムや短毛腫には多く発生する傾向があるとされています。
乳腺腫瘍を予防する方法としては
若齢での避妊手術があります。
生後半年で避妊手術を受けた場合
未避妊雌猫と比較すると
発症リスクは91%予防できるとされています。
残念ながら
100%の予防効果はありません。
生後6～12ヶ月齢での避妊手術では
発症リスクは86%減らすことができます。
生後13～24ヶ月齢での避妊手術では
発症リスクは11%減らすことができます。
早めの避妊手術の方が
予防効果が高いことがわかります。
乳腺の「しこり」には
良性腫瘍、非腫瘍性病変、悪性腫瘍があります。
良性腫瘍の主なものには
良性混合腫瘍
線維腺腫
複合腺腫、
乳管内乳頭状腺腫
などがあります。
また良性腫瘍から悪性腫瘍へと転化する場合があることも知られています。
非腫瘍性病変の主なものには
乳管拡張症
線維腺腫様過形成
があります。
非腫瘍性であっても放置すると
激しい疼痛や歩行困難など
猫が苦しんでしまうこともあります。
ほとんどのしこりは
悪性腫瘍です。
悪性腫瘍の主なものは
乳腺がん 単純型
管状がん
管状乳頭状がん
嚢胞-乳頭状がん
篩(ふるい)状がん
乳腺がん 微小乳頭浸潤型
乳腺がん 充実型
乳腺がん 退形成型
上皮内がん
導管がん
導管内乳頭状がん
コメドがん
炎症性乳腺がん
扁平上皮がん
腺扁平細胞がん
粘液がん
紡錘細胞がん
脂質分泌がん
線維肉腫
脂肪肉腫
その他の皮膚がん
など多岐にわたります。
乳腺のしこりは
良性も悪性も、非腫瘍性も
細い針による細胞診検査では明確ではないために
手術後にしっかりとした病理組織検査を実施することが必須になります。
細い針の検査は
リンパ節への転移の確認や
腫瘍性・非腫瘍性・乳腺腫瘍以外の腫瘍を区別する目的になります。
犬と同じように
最も怖いのは
炎症性乳腺がんです。
これはしこりは出来ずに
急激に発症し、
病変は赤くただれた皮膚病のような感じになり
短期間のうちに死亡してしまいます。
このがんでは手術は適応できず、
かなりの痛みに苦しむために
安楽死も多いのが炎症性乳腺がんです。
猫の乳腺腫瘍も
犬のようにステージ分類がありますが、
犬とは違い悪性度が高いので
猫専用の基準になります。
治療を行った場合の予後は
腫瘍のステージ、大きさ、腫瘍の種類、組織学的な悪性度などによって
各々のデータがあります。
ステージ分類別の
平均生存期間の中央値は
ステージⅠで、24～29ヶ月
ステージⅡで、12～13ヶ月
ステージⅢで、6～9ヶ月
ステージⅣで、1ヶ月
治療の基本は
外科手術になります。（炎症性乳腺がんは除く）
これは猫の乳腺がんの悪性度が極めて強く
内科的治療を行っている期間に
転移してしまう可能性が高いからです。
外科手術は
その猫の状態に応じて
一度に左右すべての乳腺を切除する両側乳腺全摘出を行うか
期間をあけて左右片側ずつの乳腺を切除する片側乳腺摘出を行うか
決めて実施します。
どちらの方法も
予後に顕著な差は認められないとしています。
外科手術後の病理組織学検査の結果が出たら
術後の治療を行います。
今日はここまで。
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猫の乳腺腫瘍と乳腺がん
のお話です。
犬と猫では大きく違います。
犬では良性腫瘍が多いのに対して
猫では90-95%が悪性腫瘍です。
また猫の乳腺に入る血管が複数あり、
肺などの臓器へと転移する確率も高い構造になっています。
主な転移は、
腫瘍に近い領域のリンパ節と肺に起こります。
その他には
肝臓、脾臓、腎臓、副腎、筋肉、皮膚、脳、遠隔のリンパ節などに転移した報告例があります。
猫の場合
乳腺がんが発見された時点において
肺転移が確認されるのは
およそ22%ほどと
犬と比較して極めて高い転移率です。
ただし、X線検査では直径数mmの小さな転移がんは発見できないので、
実際の転移率は
もっと多いとされています。
そのため
早期発見早期治療が基本であり、
犬のようにおっぱいにしこりが発見された後も
ゆくりと経過観察してしまうと
命取りになってしまうことがあります。
猫の乳腺は
基本的に４対８個あります。
このほかにも
未発達な乳腺が、
内股の鼠径部に見られることがあります。
猫の乳腺腫瘍は
皮膚腫瘍、リンパ腫についで
三番目に多い腫瘍で
猫の発生するすべての腫瘍の17%を占めています。
一般的に
高齢の雌猫に多く見られます。
ごく一部（1～5%)は雄猫に発生します。
発症は
6歳から増加して
ピークは10～11歳になります。
シャムや短毛腫には多く発生する傾向があるとされています。
乳腺腫瘍を予防する方法としては
若齢での避妊手術があります。
生後半年で避妊手術を受けた場合
未避妊雌猫と比較すると
発症リスクは91%予防できるとされています。
残念ながら
100%の予防効果はありません。
生後6～12ヶ月齢での避妊手術では
発症リスクは86%減らすことができます。
生後13～24ヶ月齢での避妊手術では
発症リスクは11%減らすことができます。
早めの避妊手術の方が
予防効果が高いことがわかります。
乳腺の「しこり」には
良性腫瘍、非腫瘍性病変、悪性腫瘍があります。
良性腫瘍の主なものには
良性混合腫瘍
線維腺腫
複合腺腫、
乳管内乳頭状腺腫
などがあります。
また良性腫瘍から悪性腫瘍へと転化する場合があることも知られています。
非腫瘍性病変の主なものには
乳管拡張症
線維腺腫様過形成
があります。
非腫瘍性であっても放置すると
激しい疼痛や歩行困難など
猫が苦しんでしまうこともあります。
ほとんどのしこりは
悪性腫瘍です。
悪性腫瘍の主なものは
乳腺がん 単純型
管状がん
管状乳頭状がん
嚢胞-乳頭状がん
篩(ふるい)状がん
乳腺がん 微小乳頭浸潤型
乳腺がん 充実型
乳腺がん 退形成型
上皮内がん
導管がん
導管内乳頭状がん
コメドがん
炎症性乳腺がん
扁平上皮がん
腺扁平細胞がん
粘液がん
紡錘細胞がん
脂質分泌がん
線維肉腫
脂肪肉腫
その他の皮膚がん
など多岐にわたります。
乳腺のしこりは
良性も悪性も、非腫瘍性も
細い針による細胞診検査では明確ではないために
手術後にしっかりとした病理組織検査を実施することが必須になります。
細い針の検査は
リンパ節への転移の確認や
腫瘍性・非腫瘍性・乳腺腫瘍以外の腫瘍を区別する目的になります。
犬と同じように
最も怖いのは
炎症性乳腺がんです。
これはしこりは出来ずに
急激に発症し、
病変は赤くただれた皮膚病のような感じになり
短期間のうちに死亡してしまいます。
このがんでは手術は適応できず、
かなりの痛みに苦しむために
安楽死も多いのが炎症性乳腺がんです。
猫の乳腺腫瘍も
犬のようにステージ分類がありますが、
犬とは違い悪性度が高いので
猫専用の基準になります。
治療を行った場合の予後は
腫瘍のステージ、大きさ、腫瘍の種類、組織学的な悪性度などによって
各々のデータがあります。
ステージ分類別の
平均生存期間の中央値は
ステージⅠで、24～29ヶ月
ステージⅡで、12～13ヶ月
ステージⅢで、6～9ヶ月
ステージⅣで、1ヶ月
治療の基本は
外科手術になります。（炎症性乳腺がんは除く）
これは猫の乳腺がんの悪性度が極めて強く
内科的治療を行っている期間に
転移してしまう可能性が高いからです。
外科手術は
その猫の状態に応じて
一度に左右すべての乳腺を切除する両側乳腺全摘出を行うか
期間をあけて左右片側ずつの乳腺を切除する片側乳腺摘出を行うか
決めて実施します。
どちらの方法も
予後に顕著な差は認められないとしています。
外科手術後の病理組織学検査の結果が出たら
術後の治療を行います。
今日はここまで。
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