絶滅危惧種ニホンライチョウ
(Lagopus muta japonica)


長野県環境保全研究所などの研究チームは
北アルプスにおけるライチョウの生息に適した環境が、
地球温暖化により
今世紀末にほぼ消滅する可能性があるとの予測を発表しました。

1a5f
rrbmcecol.biomedcentral.com





ライチョウは
北アルプスや御嶽山、南アルプスなどの標高の高い高山帯に
約2000羽ほどしか生息していません。

特にライチョウにとって最も環境の良い北アルプスに最も多く生息しています。

かつては
中央アルプス、白山、八ヶ岳にも生息していましたが
これらの山岳では絶滅しています。
白山で 70 年ぶりに雌1羽が確認され、中央アルプスでも最近雌1羽が確認されています。
これらの個体は、乗鞍から飛来したものと推定されます。
中央アルプスでは、卵を抱卵させたものの
雛の時に全滅しています。



次の図は
北アルプスにおける現在のライチョウのテリトリー(赤い〇)
黄色の太い線は、標高2200mの境界です。
高山帯は
極低温、積雪、強風などの過酷な自然環境の中で
ハイマツなどの低木林や雪田草原、風衝草原など
特徴的な植生を有しています。
標高2200mの森林限界を超える代表的な植生には
主な低木林には、
ハイマツPinus pumila
雪田草原には、
アオノツガザクラPhyllodoce aleutica
チングルマSieversia pentapetala
などが生育しています。
(長野県環境保全研究所発表の
12898_2019_238_Fig1_HTMLbmcecol.biomedcentral.com

ハイマツ帯は、ライチョウにとってとてもよい住処となり
食性も高山植物で、
冬は、ダケカンバなどの冬芽、
春は、風衝地のガンコウラン、コケモモなど。
雛は、雪の中から出てくるクロマメノキ、ミヤマキンバイなど雪田植物の柔らかい芽を生まれてすぐに食べ始めます。
晩夏から秋は、ハイマツの実も食べます。



 
長野県環境保全研究所は
北アルプス中南部を調査対象にして、
ライチョウの餌や巣をつくる場所となるハイマツなどの複数の高山植物の将来の植生分布を分析しています。

高山植物は
ライチョウにとってなくてはならないものであり、
高山植物の消滅はライチョウの絶滅に直結します。

そして
日本の高山植物群落は
気候変動の影響を受けやすいのです。

私も
冬と春は北アルプスにいることも多いのですが
気温の異常や雪の降り方の乱れなど
気候の変化をはっきりと体感しています。


世界の平均気温が2081~2100年に、
現在より約2~4度上昇すると想定した場合の、ハイマツなど3群の植生をシュミレーションしています。



その結果、
3群の高山植生はすべて減少し、
ライチョウの生息に適した環境の面積は現在の0.4%に急減していました。

ライチョウの生息域は
基本的にそれぞれの山で独立し、
逃れる場所がないため、
これらの山岳地帯では絶滅する可能性が高いとの結論になりました。


世界的にライチョウの存続は危機的な状況です。

その中でも特に日本のライチョウは
絶滅の危機が深刻化しています。

ニホンライチョウは
世界のライチョウの中でも最も南に生息していることや
世界の他のライチョウ生息地と比較して
最高標高が低いことから
温暖化が続いた場合、
逃げ場がないのです。

温暖化により平均気温が1°C上昇するごとに、
同じ気温の場所は標高が約150m高くなります。

標高に余裕があれば
上に逃げればいいのですが、
日本の山では不可能です。


今回調査した北アルプスでは
奥穂高岳の3190mが最高標高地点です。
一方で
ヨーロッパのライチョウの生息地のスイスアルプスの最高標高は4609 m。


最近積雪量が減少していますが
これにより積雪による断熱効果が低下し
高山植物の凍害のリスクも増しています。

雪解けが早まると
その影響で遅霜することでハイマツが枝枯れすることや
土壌の早期乾燥によって植生が変化してしまうことも報告されています。

また高山植物が、数週間早く開花してしまうことが出始めていますが
花粉を媒介する昆虫の出現が追い付いていない例も報告されています。



今回の絶滅予測には
依然としていくつもの不確定要素が残っています。
植物種は、
環境変化に対して柔軟性があり、
高山植物群落分布の減少速度はシュミレーション通りとはいかないと思いますが
それでより良い方向に向かうのか
もしくは
予測よりもさらに悪い方向に向かうのか
現時点では誰もわかりません。

私たちが出来ることは

ライチョウにとってベストなことを実行することしかありません。

すでに一部の山岳地帯では
ライチョウの絶滅が始まっています。


いまのところ、
ライチョウにとって
明るいニュースは何一つありません。


スイス連邦工科大学チューリッヒ校では、
最新のデータを元に
世界各地の気温の予測をしています。

その結果によると
2050年までに
世界の主要都市の77%が気候の「著しい変化」を記録、
22%は「いまだかつてない変化」を経験するとの予測。
ヨーロッパでは、
夏の平均気温は3.5度、冬の平均気温は4.7度上昇すると予測を公表しています。



日本の環境省は
科学的分析に基づく
未来の天気予報という動画を公開しています。





長野県蓼科の〇〇〇〇街道沿いにあるフランス料理レストランでは
裏メニューに、ライチョウ料理があります。
一切れ一万円前後で提供していると思います。
このライチョウは海外のものだそうですが
こんなことを自慢げに言っている料理人がいまだにいることが
残念です。

やはり人間が生き物たちを犠牲にしている姿勢を変えていかないとなりません。


絶滅は
緩やかになんてやってきません。

突然
一気に絶滅します。

深刻になってから
あわてても
遅いのです。


こちらも
ひかたま:ニホンライチョウ:神の使者
ひかたま:春のライチョウ
ひかたま:ライチョウ幼鳥の腸内細菌による生き残り
ひかたま:ライチョウさんたちの春の換羽
ひかたま:冬の立山連峰
ひかたま:「天私無」鳥が空を飛ぶ権利


今日もありがとうございます。
ブログランキング参加しています。
応援クリックお願いします。

人気ブログランキング