これはわんこを飼っている人向けです。
フィラリアの予防に時期になりました。
フィラリアについて
よく知りたい人だけ読んでください。



犬フィラリア Dirofilaria immitis

今日は
犬を飼っている人向けの
フィラリアの話です。


獣医師さんや動物看護師さんは
フィラリアについて
当たり前に知っていることですが
一般の人はほとんどその生態を知らないと思います。

今回の記事は
獣医師さんには常識でも
動物看護師さんはほとんどが知らない詳しいフィラリアの知識。




ここからは犬の寄生虫の話になりますので
ご興味のある人でないと面白くもなんともありません。


  ご興味ある人や動物看護士さんなど犬を扱う人は
  読み進めてください。


 日本全国にほんの数えるほどしかいないであろう
  フィラリアファン向けの記事です。
 


日本の犬に寄生するフィラリアには
心臓と肺動脈に寄生するDirofilaria immitis

皮膚に寄生するDirofilaria repens
がいます。


一般的にフィラリアというと
症例数が圧倒的に多い
心臓と肺動脈に寄生するDirofilaria immitisのことを指します。

D. immitisとD. repensの形態学的な違いは、
成虫の横断面のクチクラ層の厚みが
D. immitisで10 μm以下と細く、
D. repensは16-48 μmと厚いのが特徴です。


ここからは
フィラリアDirofilaria immitisのお話になります。


フィラリアDirofilaria immitisは
成虫になると
犬の心臓や肺動脈などに寄生して
心臓の働きを低下させることで
全身の血液循環や肺も病気になる命に関わる病態を引き起こし ます。

IMG_3199



この寄生虫は、
犬だけでなく、
猫、イルカをはじめさまざまな哺乳動物や、人にも感染することがあります。

日本では、約100例の人への寄生が確認されています。
人の場合
症状が特徴的ではないので
見逃されているケースも多いと推定されています。
フィラリアの子虫は、
人の肺動脈に栓塞して肉芽腫を形成します。
そのため、
X線撮影において胸部の陰影が
肺の肉芽腫や肺がんと似ているため、
実際に
肺がんと診断されて、
手術したらフィラリアだったという人もいます。


ちなみに薩摩藩の西郷隆盛が感染したのは、
人に寄生する別の種のフィラリアです。
人に寄生するフィラリアも
江戸時代には一般的でした。


これは
American Heartworm Societyの提供している犬フィラリアの生活環の図です。

AHS_New_HW_Life_Cycle_CLIENT_CLR_2018heartwormsociety.org





今日は
この犬糸状虫(Dirofilaria immitis)の一生についてのお話です。

いまだに日本の犬たちの間では
この寄生虫が見られます。

フィラリアの概略や
犬に感染したときの症状
予防法と治療法
などは多くの情報がインターネットで閲覧できます。

でも
フィラリア自身についての詳細な情報は見ることができません。

今回は、
フィラリアそのものに焦点を当てて解説します。



犬フィラリア(犬糸状虫)は、
を介してフィラリア症の犬から他の犬へと移されます。

犬糸状虫を媒介する蚊は、
日本では4属16種類が知られています。

その中でも代表的な蚊は
ヒトスジシマカ(ヤブカ):背中に白い縞がある蚊で、明るい日中の時間帯に活動して、夜は活動しません。
アカイエカ:夜に活動する蚊の代表格。人間や鳥の血を好んで吸います。夜布団で寝ていると耳元に来る蚊はたいていは、この蚊です。


米国の調査では
フィラリアの流行感染地で
無作為に蚊を収集してみたところ
蚊の体内にフィラリアが感染していたのは
2~20%ほどでした。

フィラリアに感染している犬の周辺部では
30%
フィラリアに感染している犬の犬舎内では
74%でした。


蚊は
産卵のために
次から次へと吸血していきます。
その移動距離は
一日3~8kmにも及びます。

こうやって
フィラリアは蚊の行動と共に拡がっていきます。



フィラリアに感染している犬には
循環血液中に
ミクロフィラリア
という極小のフィラリアの赤ちゃんたちがいます。

大量寄生している場合では
腕から一滴だけ血を採っても
顕微鏡で見ると
たくさんのミクロフィラリアが泳いでいるのが見えます。

採りたては動きが素早く
すごく活きがいいのです。
maxresdefaultyoutube





フィラリアの犬の血液をメスの蚊が吸うときに
蚊の体内に
ミクロフィラリアが血液と共に移行します。

そしてミクロフィラリアは
蚊の口吻から速やかに侵入できる細い体形をしています。




蚊が吸う血液の量は
極微量です。

蚊が血を少量吸うタイミングで
蚊の口吻の中に飛び込むのは
かなり難しいはずなのですが、
蚊の体内のフィラリア保有率から推測すると
ミクロフィラリアは蚊の口吻を理解していて
積極的に入っていくように思えます。



また蚊が犬の血を吸うのは
夜間が多いのをミクロフィラリアはよく理解していて、
そのため
ミクロフィラリアが犬の末梢血液中に出現するのも
午後4時から午前4時までがピークになります。

最も多く出現するのは
午後10時です。
これは犬が最も多く蚊に刺される時間と一致しています。


それ以外の時間は
肺の血管内で休憩することが多いようです。


季節的にも蚊が多く出現する初夏から秋が一番多く
冬は蚊がいないので、
肺の中でゆっくりと休んでいます。






蚊の体内に入り込んだミクロフィラリアは
24時間以内に蚊の消化管を通り
速やかにマルピーギ管に移動します。

マルピーギ管は
消化器から分岐した管で、
蚊の体液から水や代謝産物などを排出する機能を持っています。

ここがミクロフィラリアにとって快適な場所であることが
あらかじめわかっているようです。



マルピーギ管に移動すると
L1と呼ばれる幼虫に変態します。

このL1は、
ミクロフィラリア時代よりも
短く太い体形となり
体長は、113~319μm、
マルピーギ管で快適に成長できる形になっています。
そして
まだミクロフィラリアの時の名残りの尾があります。



そして
マルピーギ管で栄養を摂り
さらに
7~10日後に脱皮して、
L2になります。
体長は、322~608μm。
尾は不明瞭になります。



ついで3日後に2回目の脱皮をして
L3になります。

L3になると、
長さ1.1mm~1.3mm(1100~1300μm)までに成長します。
胴体は、細くなり、
尾は無くなります。

この体形は
蚊の体腔内を通り、
口吻へと速やかに移動するのに最も適しています。



このL3になるまでに発育する日数は
環境温度によって変化します。

低温では発育は遅くなり
高温では発育が早まります。

さらに
昼夜の気温差が大きい場合には
幼虫の発育は遅くなります。


ミクロフィラリアが蚊の体内で発育できる温度は
14℃~38℃で
最適温度は、25~28℃です。

この温度内であれば
ミクロフィラリアからL3になるまでの日数は
9~15日です。


蚊にとっても
フィラリアの幼虫の寄生は大きな負担になります。

トウゴウヤブカの研究では
ミクロフィラリアの寄生後、
およそ半数の個体で10日ほどで死んでしまいます。



こうして
蚊の体内でL3まで育ったフィラリアの幼虫は
マルピーギ管から出て、
蚊の体腔内を通って
唾液腺に待機して
蚊が
次の犬の血を吸う時に
すかさず口吻に移動します。


これは蚊の断面図
紫色の矢印順に、
口吻から入り、
消化管を通って
マルピーギ管(ピンク色)に行き
黄色の矢印順に
再び体腔から唾液腺を通って
口吻に行きます。
mtscholarlycommons.pacific.edu


こちらは
大きさと形の変化
上から、
ミクロフィリア、L1、L2、L3です。
IMG_3211




L3の感染子虫は、
吸血する時に
新しい宿主である犬に入り込みます。

蚊は
犬の血を吸うときに
口針を犬の皮膚に差し込み
口吻が大きく折れ曲がります。

すると
蚊の下唇の先端が破れて
血リンパ液と共にフィラリアのL3が
犬の皮膚にこぼれ落ちます。



犬の皮膚表面に落ちたL3は
蚊の吸血が終わった直後に
犬の皮膚に刺した穴が閉じないうちに
すみやかに犬の体内へと侵入します。


まるでアクション映画で出てくるシーンのようです。

ちなみにL3は
健康な犬の皮膚からは侵入出来ません。
なので、
蚊が血を吸い終わった瞬間が勝負なのです。


犬の皮膚に侵入成功したL3は、
3日~12日以内に脱皮して
L4に変身します。



L4は、
犬の体内を移動する能力が高く
皮下組織や筋線維の間を移動していきます。



感染後50~70日後には
最後の脱皮をして
未成熟虫になります。



未成熟虫になると
血管内に入り込み
血流にのって
感染後67~120日の間に
肺に到達します。

肺動脈に達した未成熟虫は
2.5cm~3.8cmほどの大きさに成長しています。



肺動脈の未成熟虫は
血流に押し流されて
肺細動脈に入り
そこから成長して大きくなるにつれて
太い動脈へと移動していきます。



成熟したフィラリアは、
寄生虫の数が少ない場合には
肺葉動脈や主肺動脈に生息することが多く
寄生虫の数が多い場合には
心臓の右心室へと移動します。

一般の人は
フィラリアは心臓の中にいるイメージが多いようです。

実際には
肺の動脈にいることが多いために
肺の血管の損傷が起こりやすく
咳や呼吸困難が出やすくなっています。



40匹以上の大量感染になると
右心室、右心房、そして大静脈にまで寄生します。

ちなみに
フィラリアは犬が亡くなった後も
しばらく生きていて
血流が止まった肺動脈から広いスペースのある心臓へと移動するために
剖検の時に心臓を開くと
活きたフィラリアが摘出されます。


感染後およそ120日で性成熟して
メスのフィラリアは25cm~30cmの大きさにまで成長していきます。



そこで
メスのフィラリアは
無数のミクロフィラリアを産んで
犬の全身の循環血液内に行き渡らせます。

全身の血流に乗ったミクロフィラリアは
次にまた
蚊にさされる機会を待っています。





こちらは
researchgate.netに掲載の犬フィラリアのメスの頭部
上の方、真ん中のリングが神経リング、
真ん中を通るのが食道と腸
右下に外陰口があります。
成熟したメスは、卵胎生で
ミクロフィラリアを直接血中に放出します。



fri1researchgate.net


こちらはオスのフィラリアの尾部
おちんちんの役割の大小の交接刺が出ています。
 側尾腺と前肛門乳頭という組織もあります。
fri2researchgate.net

別の角度から見たオスの尾部
全体的に
とても機能的な構造をしています。
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こちらはオスの尾先端部の電子顕微鏡写真
2つの白い〇は、双器と呼ばれる感覚器
小さい白い矢印は、 内唇乳頭
大きい白い矢印は、 頭乳頭 
fila1semanticscholar.org


こちらは
雄の尾部の外観
fila2semanticscholar.org

胴体部分の拡大
fila4semanticscholar.org



胴体部分にある横条線
fila5semanticscholar.org


オスの生殖器部分
突き出ているのがおちんちんの役割の交接刺。
 左右4つの膨みは前肛門乳頭と呼ばれる器官。
fila7semanticscholar.org

メスの尾部
オスと違いつるんとしています。
fi28semanticscholar.org





犬フィラリア予防薬は
大環状ラクトン系の予防薬(イベルメクチン、ミルベマイシン・オキシム、モキシデクチン、セラメクチンなど)が一般的です。

確実に予防していくためには
30日間隔での投与が必要になります。(注射薬を除く)



フィラリアの予防薬を処方している獣医師は
ただ駆虫するだけでなく
こんな勉強もしています。


そして
さまざまなメーカーから
さまざまなフィラリアのフィギアやぬいぐるみなどが贈られてきます。


特大フィラリアの模型
とても精巧にできています。
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試験管入り
実物大フィギア
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これはリアルな心臓の感触
フィラリアの数を調整出来るモデル
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説明版に張り付けてある
フィラリア模型
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犬フィラリアと仮面ライダーのコラボ
子供のいる飼い主さんは
必ず触ります。
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こちらは
猫フィラリアのモデル
台座に
リアルなフィラリアの写真が印刷されています。
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こんな芸術品も。
台座の中にフィラリアがいます。
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他にも
たくさんのフィラリア関連グッズがもらえます。


こんな寄生虫グッズを欲しがる人は
ほとんどいないとは思いますが

動物病院には
あらゆる臓器のフィギアや
さまざまな寄生虫のフィギア、
犬猫のフィギア
ドッフフードやきゃっとフードのフィギアまで
たくさんあるのです。





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