ドライアイとゾウの涙
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今日はドライアイのお話しです。
ドライアイは、涙の量が減ってしまい眼の表面が乾燥する状態です。
涙量が減ると、乾性結角膜炎を引き起こしてしまいます。

涙は目の表面で融合した三層構造になっています。
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一番外側は油層で乾きにくい構造です。
真中が涙液層
目に直接接する部分がムチン層で粘性蛋白質で涙が目の表面にくっつく仕組みです。
これらの三層は、明確に分離しているわけではなく、
各層の成分濃度勾配がゆるやかに移行しています。

涙には、さまざまな役に立つ成分が含まれています。
各種ビタミン、ミネラル、さまざまな蛋白質など。

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目の表面に留まる涙は、
全部で8μL、涙層の厚さは7μm。
 
起きている時には涙はずっと作られ、
毎分1~2μLが作られ、
余分な涙は鼻涙管を通り鼻腔へと流れていきます。

犬猫の眼は、涙が最大で30μL保持できます。
眼の表面には8μLの涙が存在するので、
あと22μLの余裕があります。
 
目薬は、だいたい1滴50μLですから、理論上点眼は1回1滴で充分なのです。
 
それ以上はこぼれるか、鼻涙管から排出されます。
もちろん目やにや異物まで取り除く時には、何滴も垂らします。
目薬は、犬や猫は何をされているのかわかりません。
よく説明して、目薬を注した後は、たくさん誉めてあげましょう。

涙液は、
眼の表面を潤し
瞼の瞬きを円滑にしたり、
血管が無い角膜部分への栄養やビタミン、アミノ酸、成長因子など様々な物質を届け、
抗菌蛋白質などの防御因子によって眼の表面を守り、
異物や古い組織などを洗い流し、
眼の表面を滑らかにして歪みの無い映像を視神経に届ける
など
たくさんの役割があります。
 
涙の出る仕組みには、交感神経、副交感神経、三叉神経が関係しています。
人では、嬉し涙や悲しい時の涙は、薄く水のような涙が出ます。
悔し涙や怒りの涙には、塩辛い涙が出ます。

でも現代科学ではまだまだ涙の本当の成分は解明できません。

涙が正常に働くためには、
結膜、角膜、瞬膜、マイボーム腺、神経などが正常である必要があります。

ドライアイには、2種類あります。
ほとんどは、涙液量が少ないタイプ

もう一つは、涙液の質的な異常のタイプ

涙液が少ないタイプでは、
涙の量は、シルマーティア試験という方法で確認します。
この試験と臨床症状から、軽度、中程度、重度と重症度を判定する目安になります。
ドライアイで引き起こされる乾性結角膜炎は、
抵抗力も失われて、こんな感じになります。
 
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犬では自己免疫性疾患による涙腺構造の破壊が主な原因とされています。
一般的には、数か月から数年かけてゆっくりと涙の量が減っていきます。
他には、
神経の異常(顔面神経麻痺や三叉神経麻痺など)や外傷性のドライアイでは、
急激に涙の量が減ってしまいます。
神経の異常の場合には、
同じ側の鼻が乾燥するドライノーズが特徴になります。
これは中年の雌犬に多い傾向があります。
また、先天性無涙症も稀にあります。
これは、ヨークシャテリアやパグに多く見られます。


涙液の質的な異常のタイプでは、
涙の成分の脂質やムチンなどの保湿成分が足りないと、
涙液が十分にあっても眼は乾燥してしまいます。
また、瞼がちゃんと閉じないために、眼が乾燥してしまう蒸発型のドライアイもあります。
 
涙が十分に出ているタイプでは、涙液層破壊時間の測定や詳細な角膜などの状態から確認していきます。
アレルギーや自己免疫性疾患などで眼瞼の炎症を起こしていたり、
全身性の脂漏症が重度の場合には、マイボーム腺から分泌される脂質成分の異常から、涙液層が不安定化することもあります。
ウイルスや細菌感染から涙液層にあるムチンに異常が出ることも知られています。

ドライアイの治療では、多くの方法があります。
それは現在の病態と、ドライアイになった原因、涙液の正常などを判断して、決めていきます。




さて
動物は悲しい時、嬉しい時、涙を流すのでしょうか?
 
喜怒哀楽で涙を流すというのは「情動性分泌」といいます。
 
これは自律神経の働きによるものなのですが、
基本的には「人間特有の生理反応」とされています。
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ここでは二つの動物を取り上げてみましょう。
ウミガメとゾウ。
 
まずはウミガメ。
よく産卵の時に涙を流すのは、有名です。
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実は、ウミガメは食事をする時に、獲物を海水ごと飲み込みます。
このままだと塩分が濃すぎるため、
目の所にある塩類腺という塩分を排泄する器官から、濃い塩水を涙のように排出するのです。
産卵中は陸にいるために、涙を流しているように見えます。
これは悲しくて涙がこぼれているわけではありません。 

でも

高等動物は悲しい時に、涙を流して泣くこともあるのです。
 
ここに二枚の写真と一つの動画があります。
一枚目は新聞の報道から。
東アフリカの大干ばつで
仔ゾウを亡くした母ゾウが涙を流しながら、鼻で埋葬しています。
 
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もう一枚は、

亡くなった母ゾウに寄り添い続けながら
涙を流しながら母ゾウを起こそうとする仔ゾウ。
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そして日本でも報道された
50年の虐待生活から解放された時に涙を流したゾウ


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 YouTube


これらは、たまたまの刺激性の涙なのでしょうか?
それとも、感情からくる涙なのでしょうか?


さて、
涙は舐めると、しょっぱいです。
そこで、
涙の塩分で作られた塩(実際はウソです)が販売されているようです。

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怒りの涙、玉ねぎを切った時の涙、笑い涙、悲しみの涙。 
実際の成分は、海の塩。 
売れてるのでしょうか?
怒りの涙塩は、樫の木で燻した海の塩
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悲しみの涙塩は、海の塩にラベンダー入り
ah_salt_sorrow
 
嬉し涙塩は、海の塩に10種類の有機ハーブ入り
ah_salt_laughter
 
くしゃみの涙塩は、海の塩に黒コショウ入り
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タマネギを切った時の涙塩は、海の塩にオニオンパウダー入り。
ちなみにハウス食品では、切っても涙が出ない玉ねぎを発表していますね。 
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これらの塩は、子どもたちの創作活動を支援する運動のチャリティーグッズとして販売しています。

でも、実際に
涙にはいろいろありますね。
その本質は、現代科学では全く解明されていません。

写真家モーリス・ミッカーさんが友人たちのさまざまな涙を乾燥結晶化させて写真撮影しています。
興味深いことに、様々な結晶になるのです。

これはトウガラシを食べた時の涙
tchiliMaurice Mikkers/MailOnline

これは玉ねぎを切った時の涙
tonionMaurice Mikkers/MailOnline

これは扇風機をじっと眺めた時に出た涙
tfanMaurice Mikkers/MailOnline

これは感情的に出た涙
temotionMaurice Mikkers/MailOnline




汚れを洗い流す涙、
悲しみや心の痛みを洗い流す涙、
嬉し涙・・・。
そして
 
最も美しい涙は
すべての存在への感謝が溢れたときに出るものでしょうか。


心が光の中に融け
もはや言葉では表現できなくなった時に、

目は口の代わりに表現を司ります。

今日もありがとうございます。
 
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