キーストン。

名馬と言われるサラブレッドです。

1962年に生まれ、幼少名は「高敏」、
1964年に競走馬としてデビューする時に「キーストン」と改名されました。


当初キーストンは
体は小さく、
大人しく、
目立たない馬でした。

主戦騎手を務めることになった山本正司氏も
当初は
キーストンのぎこちない動きを見て
特別な期待は持っていませんでした。


1964年7月に
キーストンは山本氏を鞍上にデビューしました。
このデビュー戦では、
なんと10馬身もの差をつけて圧倒的勝利を飾ります。

その後も初戦を含めて5連勝。
レコード優勝3回うち2回は、コースレコードを記録するという華やかな成績でした。

3歳のシーズンを終えて、
1964年の最優秀3歳牡馬に選出されました。

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キーストンは
3ヶ月の休養を終えて、
皐月賞に備えた前哨戦の弥生賞を3馬身差で優勝。
重賞初勝利となりました。
騎手の山本氏にとっても、デビュー10年目にして重賞初勝利となりました。



でも
その後中長距離となるレースに苦しみ
成績が上がりません。
キーストンは元々は短距離適性の馬だったのです。

馬主から騎手の交代も打診されましたが、
キーストンには山本氏しかいないとの周囲の声が高く
留任が決定。

その後
キーストンの体調は回復し、日本ダービーを迎えます。

日本ダービーは、キーストンの最も苦手な長距離。
ライバルと言われた馬ダイコーターが圧倒的1番人気に支持されていましたが、
キーストンが日本ダービー初優勝を果たしました。

ダービージョッキーとなった騎手の山本氏にとっても、
これが騎手生活を通じて唯一の八大競走優勝となりました。

キーストンと共に歩んできた騎手人生で最高の瞬間となりました。


その後も
キーストンは
騎手の山本氏と共に名コンビとなり
活躍と療養を交互に続けてきました。

ここまでの成績は
24戦中18勝利。



そして
脚の負担を考えて有馬記念の出馬を止めて
第15回阪神大賞典に臨んだ時のこと。

キーストンは圧倒的人気1番でレースに臨みました。

そこで
最終コーナーを過ぎて
最後の直線ゴール手前約300mの地点で
キーストンの脚が故障。

キーストンは前のめりにバランスを崩してしまい、
騎手の山本氏は、
落馬、
頭を強打して脳震盪を起こし、意識を失ってしまいます。



キーストンは体勢を崩しながらも数十mを走った後で転倒。
転倒後に立ち上がってから、意識が戻りつつあった騎手の山本氏の元へと
左前脚が使えない状態のまま、
山本氏の傍らに向かって歩いていきました。



キーストンは、横たわっている彼の元に来ると、
膝をついて、
彼の胸元に顔を近づけて、
鼻面を優しく押しつけました。

意識が戻ってきた彼は、
夢中になってキーストンの顔を抱きしめました。

キーストンは
とても優しい愛で彼を見つめていたそうです。

そして、
彼は
救急車に搬送されるまえに、
キーストンの手綱を誰かに託した後、
再び意識不明になります。


このシーンは一部始終テレビで中継されています。
アナウンサーは、
この様子を必死で実況しました。

その時の映像はこちらです。




キーストンは
左第一指関節完全脱臼でレース不適格と診断され、
直ちに
その場で
安楽死




通常の競走馬であれば、5分ほどで心臓が停止する薬物を注入後、
キーストンは、

心臓が止まるまで

15分も耐えたそうです。


しかも激痛にも関わらず、
全く声を上げなかったとのこと。


安楽死を担当した獣医師は、
長い間競走馬の獣医師をしてきて
こんなにすごい馬は初めてだったと供述しています。


騎手の山本氏が
再び病院で意識を回復してから
キーストンが薬殺されたことを聞き、
号泣しました。



彼は
キーストンと別れてから馬に乗ることが出来なくなってしまいました。
「キーストン無き今、もう騎乗は出来ない。」

悲しみのあまり、引退を考えていました。

その後頑張って数年騎手を務めた後で、
調教師に転身しました。


そして
引退まで調教師として第一線で活動を続けました。

彼は
「キーストンが生きていれば、もっと長く騎手を続けていただろう」
と語っています。




彼はすでに
キーストンと心を一つにしていました。


キーストンの喜びは、彼自身の喜びでもあり、
キーストンの痛みは、彼自身の痛みでした。




私たちは、誰もが各々身体をもっています。
指も骨も肝臓も眼も、すべて繋がっています。
だから、
指にトゲが刺されば、
全身で痛みを共有します。
肝臓が悪くなれば、
全身の活力に影響します。
これは当たり前のこと。

でも、
それだけではなく、
私たちは、
すべての人、
すべての動物、
すべての植物、
そして
すべての鉱物ともつながっています。

さらに、
地球とも、
宇宙の星々ともつながっている。



だから山本氏は、
キーストンとの深い付き合いの中で
一体感を感じることが出来ました。



一度でも
このような他の存在と一つになるという体験をしたら、
本当の優しさ
本当の愛
を生涯忘れることなく
持ち続けるのだと思います。




自分を大切にするのは、存在全体を大切にするのと同じこと。
すべての生き物を大切にすることは、自分を大切にするのと同じこと。


これを真に理解するには、
たくさんの経験を一つ一つ丁寧に積んでいくしかありません。





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